取扱分野WORK
破産・債務処理の問題
2. 破産免責(自己破産)について
破産手続きへの一般的な誤解について
破産手続きは、もっとも効果的に債務をなくす手続きであり、実際に多くの方が選択されている手続きであるにもかかわらず、初めて相談にいらっしゃる依頼者は「破産はしたくない」とのご意見をお持ちであることが多々あります。
- 自己破産すると今後の生活はどうなってしまうのか?
- 以前のようなまともな生活が送れないのではないか?
- 自分や家族が不利益に扱われるのではないか?
- 子供の将来や結婚に関わるのではないか?
- 近所や職場に知られてしまうのではないか?
自己破産の申し立てを考えている方のほとんどは、このような不安をもっているのではないでしょうか。そのような不安の中には、正確な知識がないがゆえの誤解が多く含まれます。まずは、ご相談者から多くお問い合わせがあった内容についてご説明いたします。
周囲や家族への影響について
家族や近所の人たちへの影響を心配することで破産に踏み切れない方が多くいらっしゃいますが、そのほとんどは誤解に基づくものです。自己破産することによって家族の財産がとられてしまうわけではありませんし、勤務先や近所の人たちに知られるということはありません。同居の家族についても、その方の財産が没収されるようなことはありません。また、なるべく会社に知られず破産の手続きを勧めることもできますし、仮に偶然会社がそれを知ったとしても、破産したことをもって従業員を解雇することは認められていません。
- 家族があなたに代わって借金を支払っていく必要はありません。
- 家族所有の家や車などの財産を取られてしまうことはありません。
- お子様の進学・就職・結婚に不利益な影響はありません。
- あなたや家族が会社を辞めさせられることはありません。
財産について
自己破産をすると、財産についてすべて取り上げられてしまうというわけではありません。不動産・価値の高い一部の乗用車・退職金の一部などは債権者に配当されますが、ほとんどの家財について影響がありません。 また現金についても、ある程度は手元に残ることが多いといえます。
- 破産手続きを行ったことで、給料が差し押えられることはありません。
- 日常生活に必要な家財道具・生活必需品を手放す必要はありません。
- 年金や公的扶助は受けられます。
- 手続き終了後は、引っ越し、旅行も自由です。
- 手続き後の財産については制限を受けません
身分について
破産免責とは、これ以上支払いをする責任がないことを公に認めてもらう手続きです。免責が出た後は、何の制約もない状態で再スタートを切れるというのが原則です。したがって、破産したことが戸籍や住民票に記載されたり、選挙権がなくなるというようなことは一切ありません。また、仮に破産手続きが終了していなくても、家族や家計が裁判所に管理されてしまうことはありませんし、債権者から直接責め立てられるようなことはありません。
破産・免責申立手続(自己破産)のデメリットについて
自己破産手続きは、他の債務整理(借金整理)に比べれば、何かと制限が多いことは事実ですが、申立人の人格権が否定されるような制限はありません。
1.信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に情報が載ってしまうことにより、以後の借り入れができなくなる(債務整理、民事再生についても同様です)。
2.一定の財産については債権者に配当されてしまう。
具体的には次のとおりです。(取り上げられてしまう財産の例)
- 不動産(土地・マイホーム・別荘)
- 裁判所で認められた額を超える現金
- 20万円を超える預貯金
- 20万円を超える株券、ゴルフ会員権などの有価証券
- 20万円を超える生命保険の解約返戻金
- 20万円を超える価値がある自動車
受給予定退職金額の1/4~1/8の額が20万円を超える場合、その受給予定退職金の1/4~1/8の額(裁判所によって割合が異なります)
3.免責手続期間中においては、市役所発行の身分証明書にその旨の記載がされる(ただし、原則本人からの請求でないと取得できない)。
4.一定の資格制限があるため、一部の職業に就けない(ただし、免責許可決定の確定により資格制限はなくなります)。
- 貸金業・質業・旅行業・宅地建物取引業・損害保険業等を営むことができなくなります。
- 弁護士・司法書士・公認会計士・税理士・弁理士等として登録することができません。
- 警備員・生命保険募集人等の職に就けません。
5.官報に載ってしまう(民事再生も同様です)
同時廃止事件と管財事件について
破産には、同時廃止事件と管財事件の2つがあります。その違いと場合分けは下記の通りです。
- (ア)同時廃止事件
- 大多数の手続きはこちらです。本来法律が定めている原則的な手続きは、下記の管財事件なのですが、ほとんど財産と呼べるものがない破産のケースでは、あえて管財人をつけて分配の手続きをとる必要性が薄くなってしまいます。そこで、財産がない場合には、管財人を選任せず、裁判官との面談をもって、次の免責手続きに移行してしまう手続きです。実際には、破産に至る方はすでにほとんど財産と呼べるものが残っていないことが多く、冒頭で述べたように多数の事件は同時廃止ということになります。
- (イ)管財事件
- 破産者に財産があり、公平な配当が必要と考えられる場合(不動産や金融資産がある場合です)には、管財人が選任され、財産の換価処分等を行う手続きです。管財人の報酬は破産者が裁判所に納める必要があり、最低20万円程度を見込まねばなりません。
破産・免責手続(自己破産)の流れと費用
- 1-面談相談
- 2-委任契約締結(債務整理手続開始)
- 3-受任通知の送付
- 4-債務調査(引き直し計算等)・過払い金返還請求
- 5-申立書作成・申立て
- 6-第一回審問期日
- 7-破産手続開始決定・(同時廃止決定)
- 8-第2回審問期日
- 9-免責許可決定
- 10-免責許可決定確定